きいろのカーテン

パリで暮らす

太陽

パリの冬は雨が続くらしい。

日に何度も溢れてはこらえ、また溢れてはこらえを繰り返す空。

ふと雨が止み見上げると、雨粒をぐっと蓄えた灰色の雲と雲のあいだに、光が透けて薄く白んで見えるくらいになっただけで、やっと晴れたと思ってしまうほど、晴れた日が少なくなってきた。

この日は、雨に降られながら学校に向かったけれど、帰りの時間には、すっきりと青空になっていた。

学校から帰る方法は、バスとトラムのふたつ。バスは建物の陰を通る道なので、トラムを選ぶことにした。

トラムの通る道へと向かう広い通りの先に太陽があり、街灯の影も自分の影も濡れた道に伸びやかだった。

太陽に向かって伸びてゆく蔓や、光源を目指すてんとう虫を思い浮かべていると、遠くからトラムの軽やかな鐘の音にも似たカンカンという音が聞こえてきた。

 

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◻︎停車駅ごとに音楽とアナウンスの声が変わるのが楽しいトラム。