きいろのカーテン

パリで暮らす

太陽

パリの冬は雨が続くらしい。

日に何度も溢れてはこらえ、また溢れてはこらえを繰り返す空。

ふと雨が止み見上げると、雨粒をぐっと蓄えた灰色の雲と雲のあいだに、光が透けて薄く白んで見えるくらいになっただけで、やっと晴れたと思ってしまうほど、晴れた日が少なくなってきた。

この日は、雨に降られながら学校に向かったけれど、帰りの時間には、すっきりと青空になっていた。

学校から帰る方法は、バスとトラムのふたつ。バスは建物の陰を通る道なので、トラムを選ぶことにした。

トラムの通る道へと向かう広い通りの先に太陽があり、街灯の影も自分の影も濡れた道に伸びやかだった。

太陽に向かって伸びてゆく蔓や、光源を目指すてんとう虫を思い浮かべていると、遠くからトラムの軽やかな鐘の音にも似たカンカンという音が聞こえてきた。

 

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◻︎停車駅ごとに音楽とアナウンスの声が変わるのが楽しいトラム。

封筒

先週に引き続き、在仏日本大使館を訪れた。先週は保険の申請のためなどに使う出生証明書の作成をお願いするため、今週はできあがった証明書を早速受け取るために。

薄青色のファイルをせっかく用意したのに、家のテーブルに忘れてきてしまったなと思っていたら、証明書と共に、丁寧に封筒を渡される。
封筒は、まっすぐな長方形をしていて、ひっそりと薄く、封が正しく伏せてある。証明書を折ることなく、滑りこませる。そして、久しぶりの封筒をしばらく撫でてしまう。

帰り際、Toilettesと書かれた扉を開くと、おや、お前こんなところにいたのかと、そんなことはないのに、ずっと長いあいだパリ中を探し続けていた様な気になりながら、棚の影に隠されるように佇む狸と出会った。

 

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